テロメライシンの細胞実験

2007年1月、テレビ朝日「たけしの本当は怖い家庭の医学(スペシャル)」でテロメライシンが特集されていましたので、キャプチャー画像を交えつつ、その内容を解説していきたいと思います。

藤原俊義先生

今から6年前に「新しいがんの治療薬」の研究をスタートさせた、岡山大学遺伝子細胞治療センターの藤原俊義助教授がテロメライシンについて語っておられました。

藤原先生「テロメライシンは新しいタイプのがんの治療薬です。風邪になるウイルスの遺伝子を改変することによって、がん細胞の中だけで増えて、がん細胞だけを破壊する事ができます。」

テロメライシン

テロメライシン(上部写真)をがん細胞に直接注射したところ、3日間で100万倍以上に増殖。がん細胞を次々と破壊していったという。細胞実験の内容は以下に続きます。

生きたがん細胞に注入

シャーレの中で培養されている人間の肺のがん細胞にテロメライシンを注入します。注入する前のがん細胞の様子を顕微鏡で見ると、下の写真の様にびっしりとがん細胞が繁殖しています。

注入前に撮影した細胞の様子

密集したがん細胞の様子です。ここにテロメライシンを注入して24時間経過後に再び顕微鏡で見てみると…

24時間後の細胞の様子

右上の白く浮かんで見える気泡状のものは死んだがん細胞です。早速、効果が出てきた模様。36時間後には、さらに広範囲において効き目が確認された。そして48時間後になると…

48時間後の細胞の様子

見てはっきりとわかるように、シャーレの中のがん細胞は完全に死滅していたのです(ここで、スタジオの「オーッ!」という感嘆の声)。この細胞実験の結果、テロメライシンの強力な効果が確認されました。

藤原俊義先生が再び登場

藤原先生「テロメライシンはがん細胞の中で増えて、がん細胞だけを破壊しますが、正常の細胞の中では増えずに自然消滅します。したがって、いままでの抗がん剤のような副作用は無いと考えられます。」

がん患者にとって肉体的にも精神的にも、最も苦痛とされている抗がん剤の副作用がほとんど無いというのは、実に画期的な治療薬です。
次回からはこれを証明するために行なわれた「テロメライシンの動物実験」を見ていきましょう。

テロメライシンの動物実験

前回はテロメライシンの細胞実験を見ていただきましたが、今回は次の段階である動物実験の映像を解説していきます。
細胞実験では『がん細胞の中でのみ増殖し、普通の細胞では増殖せずに自然消滅する→今までの抗がん剤と違って副作用の影響がほとんどない。』と結論付けられましたが、動物ではいったいどうなるのでしょうか?

実験用のマウス

用意されたのは背中に人間のがん細胞を移植された実験用のネズミです。大きく膨れた部分(=がん)に直接、注射でテロメライシンを注入します。そして、15日後の経過を見てみると…

15日後の様子

患部中央に茶色くくぼんだ箇所が見受けられます。これはテロメライシンの効果でがん細胞が崩れ、壊死していることを意味しています。30日後には突起部分がほとんどなくなりました。そして45日後に驚くべき変化が・・・

45日後の様子

がん細胞が完全に破壊された後に皮膚が蘇ってきたのです。これは、正常な細胞(=がんではない)にはテロメライシンが影響を及ぼしておらず、自然治癒で皮膚が再生しているということです。

60日後の様子

そして、注入から60日後のマウスの背中です。もはや、がんだった形跡はどこにも見受けられません。この間、マウスの活動において副作用と思われる症状はほとんど認められませんでした。
こうしてテロメライシンは生きた動物においても、がん細胞だけを破壊し、副作用をほとんどもたらさないことが確認されたのです。

次回は、テロメライシンの人への治験(前編)を見ていきたいと思います。

テロメライシン:人への治験(前編)

前回ではテロメライシンの動物実験における成果を見てきましたが、今回はいよいよ人への治験です。細胞、動物で発揮された効果は果たして人においても確認できるのでしょうか?

メアリー・クロウリー治験センター

舞台は2006年11月下旬(人への初めての投与は10月でしたが、テレビ取材は11月に行なわれました)、テキサス州ダラスのベイラー大学病院・がんセンター内にあるメアリー・クロウリー治験センター。同センターはがんの新しい治療法を試験的に行なう、アメリカでも有数の治験施設です。

ビバリー・ブリッジスさん

センターの一室に登場したのはビバリー・ブリッジス(57)さん。この女性こそ、世界で始めてテロメライシンの投与を受けた人なのです。

ビバリーさんの胸部CT

彼女ががんと診断されたのは3年前。発見された時期が遅れたため、既に現代医学では治療が難しい段階にまでがんが進行していました。
上の写真はビバリーさんの胸部CT画像。左の赤い丸内にみえる白い線状の影はがんです。右側の青い丸内の正常部と比べると違いがはっきりと確認できます。

転移したがん

最初に発見された乳がんは手術により切除されたものの、後に右脇下のリンパ節に転移がんが発見された。この転移がんは神経や血管を巻き込んで拡大を続け、切除が出来ませんでした。また抗がん剤も強い副作用だけが残り、がんの進行を止めることはありませんでした。

テロメライシンを投与

皮膚に近い場所にあったために、がんが肉眼で見えたと語るビバリーさん。2週間もすれば大きくなるのがわかったそうだ。抗がん剤の副作用が相当きつかったようで、インタビュー放送の中で涙ぐんでいました。『もう、私にはこれ(テロメライシン)しかないんです。』と2006年10月にテロメライシンの投与を受けた。

その後、週に一度のペースで精密検査を受けているビバリーさん。彼女のがん細胞にどのような変化が見られたでしょうか?
続きはテロメライシン:人への治験(後編)で見て行きたいと思います。

テロメライシン:人への治験(後編)

前回のテロメライシン:人への治験(前編)では、世界で初めてテロメライシンの投与を受けたビバリー・ブリッジス(57)さんを紹介しました。週に一回のペースで続けられている精密検査でどのような変化が確認されたのか、見ていきたいと思います。

治験担当:ネムナイティス医師

今回の治験を担当したのはメアリー・クロウリー治験センターのジョン・ネムナイティス医師です。人への投与は初めてということで、最優先したのはビバリーさんの安全。そのためテロメライシンの投与量は必要十分な量の100分の1にしたとのこと。
ネムナイティス先生は「この量でも彼女の癌の成長を止められると信じている。」と語っておられました。

検査結果

そして一週間後、検査結果のレポートを手にネムナイティス先生。「結果はうれしい驚きでした。1ヶ月前に撮影したものと癌の大きさが変わっていなかったのです。」これはがんの成長が止まったということです。

投与前後のCT

彼女胸部CT画像で赤と青の円内の部分(ここががんです)見比べてみると、若干の違いはあれども、大きさが変わっていないのがわかります。今まで、ほかの抗がん剤を寄せ付けずに成長を続けてきたがん細胞が進行を止めたのです。さらに…

検査結果レポート

検査結果のレポートには「がん細胞の割合が90%から50〜60%にまで減少していた」とあります。これはビバリーさんのがん細胞の成長が止まっただけではなく、大幅ながん細胞の減少も見られたことを意味しています。繰り返しになりますが、今回投与されたのは必要十分量の100分の1の量に過ぎません。

検査結果を語る

ネムナイティス医師「まだ最終的な結論は出ていませんが、今回の結果には満足しています。それはがん細胞の中で何かが起きているからです。テロメライシンの治験はまだ始まったばかりの段階です。私が本当に満足するのはウイルスが完全に作用し、患者の生存がかなったときでしょう。」(了)

テロメライシンが一般患者に医薬品として投与される日はいつになるか?ということが気になってくるのですが、認可の流れとしては
基礎研究(2〜3年)→非臨床試験(3〜5年)→第I相臨床試験(アメリカは現在、この段階)→第II相臨床試験→第III相臨床試験(臨床試験で3〜5年)→承認審査(2〜3年)となっています。

今回キャプチャーで見ていきましたテレビ朝日「たけしの本当は怖い過程の医学SP」では「がんを注射で治療する日まで後何十年・・・?」というサブタイトルが付けられていましたが、このまま試験が進んだ場合、何十年というのは大げさだと思います(最短で2012年に実用化のスケジュール)。
もちろん、重大な副作用など、なんらかの問題が見つかり、現代医学での解決が難しいと判断された場合は、医薬品として使われる機会そのものが失われてしまいますが…

また近年では、テロメライシンと同様の作用を持つ"単純ヘルペスウイルスHF10"などの研究もすすめられています。今後数年内に患者さんに大きな希望をもたらす進歩がなされることを願ってやみません。

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