SMAP法で抗がん剤「イレッサ」の感受性を迅速に診断

理化学研究所は、シンガポール国立大学病院などと共同で、肺がん治療のオーダーメイド化を実現する迅速かつ正確な診断法(SMAP法)の臨床試験に向けた、実質的な研究を始動したと発表した。
SMAP法は、理研ゲノム科学総合研究センターの遺伝子構造・機能研究グループを中心とする共同研究グループが開発した診断法で、ごく少量の検体を前処理試薬と混合し加熱処理後、そのまま増幅試薬に添加し、60℃で反応させる簡便で迅速な国産のSNP(ゲノム全体に分布しているDNA配列の違い)の診断技術。

研究グループは、横浜市立大学医学部などと肺がんに用いられる抗がん剤ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)の感受性をSMAP法により迅速に調べる臨床研究を行っているが、日本国外のパートナーとしてはシンガポール国立大学および大学病院が初の共同研究となる。

肺がんは、シンガポールでは男性の死因の第1位となっており、女性でも第3位を占めている。
これまでの世界各国の研究で、上皮性増殖因子受容体(EGFR)遺伝子に変異のある肺がん患者では、EGFRをブロックするゲフィチニブが顕著に効果を示し、末期がん患者においても生存率が上がることがわかっている。
しかし一方では、ゲフィチニブには「間質性肺炎」という極めて重篤な副作用がある。
そこで、EGFR遺伝子の変異の有無を調べて、患者にゲフィチニブが有効かどうかを事前に調べることにより、より良い治療ができるものと考えられている。

従来は、病巣の腫瘍を外科的に切除した後で、細胞採取して検査し、ゲフィチニブが有効かどうかを調べているが、この検査プロセスにはおよそ3週間も要していた。
共同研究チームでは、手術中に取り出したごく少量の組織片にSMAP法を適用することにより、診断に要する時間を1時間以下に大幅短縮できるとしている。

シンガポール国立大学病院では、まずは、40名の肺がん患者の組織を用いた試験を行い、この中で、SMAP法と既存のPCR法による診断の正確さと効率性を比較し、SMAP法の有効性を確認していくことにしている。
この研究は、1年間で約100名の患者に適用するほか、将来的には、他の疾患においてもSMAPキットの試験を行なう計画だという。(NIKKEIほか)

イレッサについて
イレッサは、肺がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるたんぱく質に作用し、がんの増殖を抑えます。この受容体に遺伝子変異があると、薬が効きやすいとの研究があります。日本人、特に女性や、非小細胞肺がんの一種、腺がんの患者は、遺伝子変異の割合が高いとされています。

一方、イレッサの副作用とみられる重い肺障害の発症率は、他の抗がん剤を使った患者に比べ約3倍に高まることが、イレッサを販売するアストラゼネカ社が国内で実施した大規模な調査でわかっています。