女性の更年期障害の治療に「ホルモン補充療法(HRT)」を実施しても乳がんになるリスクは上がらず、逆に6割ほど下がることが、厚生労働省研究班(主任研究者=佐伯俊昭・埼玉医科大教授)の調査でわかった。
HRTは、米国の臨床試験で「乳がんのリスクを高める」とされて以来、国内でも敬遠されがちだったが、研究班は「更年期障害に悩む日本人にとっては、利益の方が大きい」としている。
調査は04〜05年秋に実施された。大阪府立成人病センターなど全国7施設で、過去10年以内に乳がんの手術を受けた45〜69歳の女性(3434人)と、がん検診を受けに来た人で、乳がんでなかった同年代の女性(2427人)の2グループに対し、HRTの経験など21項目をアンケートした。
その結果、乳がん患者グループではHRT経験者が5%で、もう一方のグループは11%。統計上、HRT経験者の方が、乳がんになるリスクは57%低かった。女性ホルモンのエストロゲンを単独で使った場合と、エストロゲンと黄体ホルモンを併用した場合ではリスク差はなく、HRT経験者の半数近くは、期間は1年未満だった。
経口薬などで女性ホルモンを摂取するHRTは、欧米では一般的な治療法。だが、米国国立衛生研究所が91年から15年計画で始めた大規模臨床試験で、乳がんや脳卒中などのリスクが高まることが指摘され、02年に試験も中止された。
日本国内では更年期障害の治療は普及しておらず、HRTに関する大規模な調査もなかった。米国での試験中止以降は副作用を恐れる人も多く、現在、HRTを受けている人は数%とされる。
日本人の乳がんリスクが低かった原因について佐伯教授は、米国人と異なり乳がん発症のピークが閉経前の45〜49歳にあること、HRTを何年も続ける米国人に比べて、使用期間が短いことなどを挙げている。
「欧米のように閉経後の乳がんが増えれば、状況は変わるかもしれない。HRTを受けたから乳がんにならないというわけではなく、同時に検診を受けることが必要だ」と話している。(asahi.com)
ホルモン補充療法(HRT)とは?
ホルモン補充療法は、エストロゲン(女性ホルモン)の量が減少した時に、体内のエストロゲンを回復させる療法です。エストロゲンの量を下げる最も一般的な原因には、閉経が挙げられます。閉経期には、卵巣(卵子やホルモンを生成する器官)がエストロゲンの生成を止め、月経が終了します。
手術によって卵巣を摘出した女性も、エストロゲンの量が減少し、閉経期のような症状や肉体的な変化を経験します。
