テロメライシンのがん治療への応用

最近の分子生物学の進歩により、がん細胞の悪性形質の発現に重要な分子を標的とした抗がん治療の開発が試みられている。
従来の抗がん剤は、がん組織での効果を上げるためには投与量を増やす必要があり、全身的な副作用が問題となってきた。また放射線治療では、画像的に描出できない微小転移などは治療できない。
がん細胞での選択的増殖能を持つ生物製剤ならば、投与量を低く設定してもがん局所での自律増殖が期待でき、また肉眼的に認知できない微小がんも対象とすることができる。

染色体末端のテロメア長を保つ作用を持つ酵素テロメラーゼは極めて多くのがん細胞でその活性の上昇が知られており、現在、がん治療のターゲットとして最も注目を浴びている分子の一つである。
テロメライシン(Telomelysin、開発コード:OBP-301)は、テロメラーゼ構成成分であるhTERT (human telomerase reverse transcriptase) 遺伝子のプロモーターを用いて作成した腫瘍融解ウイルス(Oncolytic Virus)である。

テロメラーゼは85%以上のヒト癌でその活性の上昇が知られており、テロメライシンは広範な癌細胞で選択的に増殖し、細胞融解を引き起す。腫瘍内に投与された場合、ウイルスは三次元的に腫瘍組織内に拡散し、連鎖的に細胞死を誘導することで広範囲の腫瘍壊死を生じると考えられる。

また、テロメラーゼ活性を持たない正常細胞ではその増殖は制限され、安全性が確保される。このテロメライシンをコア技術として岡山大学発バイオベンチャー オンコリスバイオファーマ(株)を起業し、がんの治療用・診断用医薬品としての臨床開発を推進している。

テロメライシンの臨床応用は、オンコリスバイオファーマから米国食品医薬品局(FDA)への治験申請(IND)の承認のもと、2006年11月よりテキサス州ダラスのMary Crowley Medical Research Centerにて開始された。この第I相臨床試験によりテロメライシンの安全性に関する情報が得られる。

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